どうにも難しいねぇ。いなりずしをじぶんでつくるってのは。一番シンプルないなりずしだったら、材料なんて、お米、油あげ、あとはお酢やら砂糖やらの調味料だけだよ。それなのに、できあがりの味は毎回ちがって、ちっとも落ち着かない。おいしい、と言える領域には着地するんだけど、70点とか80点あたりをウロウロしている。どうにも満足のいくものができない。

好きな食べ物はなに?て聞かれたら、答える相手によって意味もなく変えていたりするんだけど、ほとんどが素直に「いなりずしが、もうたまらない!」と答えている。小さいころ、給食がない日に学校から帰宅すると、母親がつくっておいてくれたいなりずしのピラミッドが、宝の山に見えていたもんだ。

好きないなりずしなもんだから、80点くらいの出来でも、うれしそうに食べられちゃう。好きっていうことはそういうもんだろう?

もしかしたらそんなだから、いなりずしづくりがまるきり上手にならないのかもしれない。最近そう思うようになった。大好物ではないメニューほど、出来が100点以上でないと、その時の食事を満足できないから、無意識にがんばってつくっているのかもしれない。

その理論でいくと、じぶんの大好物をメインに出す飲食店を営むひとは、その大好物を満足のいく一品にするため、修行、修行、修行の毎日になるわけだ。でもそこにゴールはなく、つねにその先を追っているわけなんだろうね。

(honshoku/平井巧)