異なる産地の珈琲豆を掛け合わせた「ブレンドコーヒー」。タイプの異なる味噌を掛け合わせた「合わせ味噌」。他にも異なるぶどうの品種を掛け合わせたワインや、異なる原料を掛け合わせたウイスキーなど、ブレンドが主流となっている食べものは意外と多い。

にもかかわらず、「ブレンド米」と聞くと、多くの人が高値のお米と安いお米を混ぜた“偽装米”を連想するらしい。

コーヒーや味噌やワインなどは、おいしさを目指してブレンドされている。ならば、お米だっておいしさを目指したブレンドがあっていいはずだ。

そこで、「ブレンド米」の可能性をもっともっと掘り起こしていくためにも、まずは、お米のプロである五ツ星お米マイスターにブレンド米について聞いてみよう。というわけで、お米好きライター柏木智帆が、おなじみ「小池精米店」三代目の小池理雄さんを訪ねました。

honshokuのブレンド米は、ネットストア「honshokuのお店」で販売中!

柏木
ブレンド米と聞くと、お客さんの反応ってどうですか?

 

小池
昔と今とは違います。昔は、価格を下げるためという要素が大きかったですね。たとえば、美容院から『スタッフのまかないにするので何でもいいから安い米をくれ』と言われてブレンドしたり。

 

柏木
原宿という土地柄、飲食店はもちろん、いろいろな業態からお米の注文があるのですねえ。

 

小池
一方で、お米の営業をしていたときに飲食店から『(お米を)混ぜるんじゃねえぞ』とよく言われていて。飲食店向けでは、ブランド米よりも単一銘柄のほうが売り上げが良かったんです。

 

柏木
ああ、やはり。『当店は魚沼産コシヒカリを使用しています』とかよく見かけますよね。

 

小池
ところが、数年前からブランド米の状況が変わってきたのです。たとえば、アボカド料理専門のお店からは、『うちのアボカドに合うブレンド米をつくってほしい』という注文をいただきました。他にも、鮨屋からは『うちのオリジナル米をつくってほしい』という要望があります。こういうニーズがあると楽しいですよね。ブレンド米に対するイメージは良くなってきているように感じますね。

 

柏木
それはうれしいですね。そもそもブレンド米のイメージが悪くなったのって、偽装問題の影響とかですかね。

 

小池
1993年の大冷害の年に、日本米とタイ米を混ぜたものが『おいしくない』と言われブレンド米のイメージが悪くなったという側面もあります。それから、昔は『格上げ混米』といって一部の米屋がブレンドによりお米の質を下げているにもかかわらず値段は変えないで販売している、といったこともあったようですね。

 

柏木
なるほど。でも、本来はおいしいお米を生み出すためにブレンドしていたのですよね。お米の味は毎年違うから…。

 

小池
もともとはそうなんです。昔は年間通じてそこそこおいしいお米を食べるために、違う品種のお米を混ぜて、米屋ごとにオリジナルブレンド米も販売していました。戦後は、お米の生産量が増えた一方で、食生活の変化からお米の消費量が減少し、ついに1960年末にはお米の需要と供給の量が逆転したのです。かつては、お米は『おなかいっぱい食べられればいい』という時代もありましたが、1960年末からは次第に量よりも質が求められるようになり、コシヒカリなど高値のつくお米も登場したのです。すると、そうした高値のお米に古米や別の品種を混ぜたブレンド米を『単一銘柄』と偽装したお米が出回り始めました。

 

柏木
何度か摘発されましたよね。

 

小池
さらに1993年の大冷害時に登場した国産米とタイ米のブレンドの評価が低かったこともあり、先ほど話した偽装の件と相まって、ブレンド米に対して『ニセモノ』『マゼモノ』という芳しくないイメージを持たれるようになってしまったのです。

 

柏木
本来はおいしさが目的のはずのブレンド米なのに…。

 

小池
お米は収穫年によって味の違いはあります。工業製品ではなく農産物ですからね。そのため、ブレンド米はおいしさを保つ手法でもあるのです。関西の米屋では昔からオリジナルブレンド米を作っているところが多く、お客さんもブレンド米を食べる習慣があるそうです。

 

柏木
へえー、関西のお米屋さんに行ってみたいです。私は関東にしか住んだことがなく、ブレンド米に出会う機会は限られています。ところで、ブレンド米とひとくちに言っても、購入する際にはその中身が知りたくなりますね。

 

小池
昔はブレンド米の中身は明かさないものでしたが、僕は中身を言うようにしています。その理由は二つあります。一つは後ろめたいことはしていませんと宣言していること。そしてもう一つはお客さんにお米に関心をもってもらいたいと考えているからです。

 

柏木
現代のブレンド米の魅力ってなんでしょう。

 

小池
新品種がどんどんデビューして、いろいろな品種があります。それでも、そうしたお米が単一では表現できない味をブレンド米は表現できるのです。自由自在に。

 

柏木
すごい!自由自在に。

 

小池
お米屋は日本全国のお米の味を知っているからできるのです。組み合わせが頭の中に浮かぶのですね。

 

柏木
いいなあ。そうなりたいです。

 

小池
ブレンド米はお米さえあればご自宅でもできますよ。お米屋で3種類を1キロずつ購入することもできますよ。まずは、どういうお米を食べたいのか、どういう料理を合わせたいのか、ゴールを想定します。たとえば『もっちりしているお米をもう少し歯ごたえをしっかりとさせたい』とか『パラパラしているお米をさらにパラパラさせたい』とか。

 

柏木
いいですね。合わせるおかずや気分によって食べたいお米を変えるのは楽しそうですね。楽しみの幅が増えそう。わたしチャーハンはインディカ米並にパラパラのお米も好きです。

 

小池
1つ目のコツは、同じような特徴のあるお米を混ぜないこと。ミルキークイーンとゆめぴりかだといずれももっちり系で似ていますよね。その場合は、片方はあっさり系にするとか…。

 

柏木
たしかに似た品種同士だとブレンドする意味が薄そうですね。わたし先日ササニシキが足りなくて、ササシグレを足しました。特に新たな味が生まれたわけでなく、ササ系のおいしいお米になりました(笑)

 

小池
2つ目のコツは、割合をどちらかに偏らせること。たとえば2種類のお米をブレンドする場合は、5:5 よりも 6:4 とか 7:3 にする。そのほうが、『コシヒカリの割合をもう少し減らそう』とか、カスタマイズしやすいですよ。

 

柏木
なるほど。ブレンド米を自分でつくってみると、お米の特徴やおかずとの相性について意識するきっかけになりそうですね。最初はハードルが高そうですが、やってみるとお米との意外な出会いがありそうですよね。

 

小池
お米のポテンシャルを引き出し得る技とも言えますよね。

 

柏木
私はミルキークイーンが苦手でして。餅っぽい香りとか、もっちりしすぎな食感とか。でも、他のお米にミルキークイーンを2割とか1割とかちょこっとだけ入れると、餅っぽい香りが薄まり、もっちりしすぎず、食べやすくなる。これならミルキークイーンを愛せるなあと(笑)

 

小池
もっと気楽に家庭でもブレンド米を楽しむ習慣が根付くといいですよね。ワインセラーならぬお米セラーがあれば、みなさん数品種のお米を購入するようになるのではないかなと思っています。

 

柏木
うちはお米を保存するために小型冷蔵庫を買いましたよ。中はお米(とお酒)だらけ(笑)。でも、ワインセラーみたいにオシャレなお米セラーがあったらいいですよね。誰かつくってくれませんかねえ。

INFORMATION

honshokuのブレンド米は、ネットストア「honshokuのお店」で販売中!

問い合わせ先
info@honshoku.com(担当:平井)