新幹線に乗ると、無性にお酒が飲みたくなるのは何でだろう。

出張の帰りは、新幹線の発車時刻ギリギリでも、駅構内を走り回り、ビールや日本酒などをゲットする。

せっかく新幹線に乗っているにもかかわらずお酒を飲まないと、珈琲がおいしいと評判の喫茶店で紅茶を頼んでしまったような、なんだかちょっぴり損した気分にさえなる。

新幹線が発車し始めると同時に、車内のあらゆる席から「ぷしゅっ」「ぷしゅっ」と缶ビールを空ける音がすると、うれしくなる。見ず知らずの乗客に対して、「ああ、お疲れさま」と心の中でつぶやく。

飲食店でもそうだけど、他人がどんな料理を注文しているのかが気になって、近くのテーブルを覗き見てしまうクセがある。

スーパーでも他人がどんなものを買っているのかが気になって、買い物かごを覗き見てしまうクセがある。

飛行機の機内食でも、他人がどんな飲み物を選ぶのか、洋食と和食のどちらを選ぶのか、フィッシュとチキンのどちらを選ぶのかが気になって、耳をそばだてたり、近くの席を覗き見てしまうクセがある。

「美味礼賛」を著したフランスのブリア・サヴァランが「ふだん何を食べているのか言ってごらんなさい、そしてあなたがどんな人だか言ってみせましょう」という言葉を残しているけど、本当にその通り。食の好みは人を映し出すと思っている。

新幹線の車内でも同じく、他人がどんなお酒を選び、どんなつまみを選んでいるのか気になる。駅弁を食べたり、ビールを飲んだり、スナック菓子を食べたり、缶チューハイを飲んだり。無防備に食べている様子を見ると、その見知らぬ人に対して、なんとなく親近感がわいてくる。

一緒に食事をすると仲良くなるのは、楽しい時間を共に過ごして打ち解けるという要素だけでなく、相手の食の好みを知ることで親近感が湧くという側面もあるように思う。注文した料理を見て、「この人は意外にマヨネーズが好きなんだなーかわゆい」とか、「この人は意外にあっさり系が好きなのねー意外」とか、その人の日常の食習慣が目に見えてくる。すると、なんとなく、その人のことをより知ることができたような気分になる。

こういう話をすると、「え、一緒に食事に行くの怖いんだけど」とか言われることもあるけど、私も同じように食事相手から「柏木はこういうのが好きなんだーへえー」と思われているに違いない。

先日は新幹線の中で、ビールを1缶飲んで、柿の葉寿司を6貫食べて、日本酒をちょろっと飲んで、おせんべいを1枚食べた。この食事からはどんなやつだと見られるんだろう。

(柏木智帆)