先日、兵庫県で駅弁を製造販売している会社の方にお会いした。

駅弁って新幹線やローカル線に乗って車窓からの景色を眺めながら食べるとおいしい。でも、自宅に持ち帰って食べると、そのおいしさが半減してしまう。

駅弁とは、ごはんやおかずそのものを食べるのではなく、旅情を食べているのだと思う。それだけに、百貨店に全国の駅弁が一堂に会する「駅弁まつり」などの催事には、あまり興味が持てなかった。

でも、かつて旅先で食べた駅弁に出会ったら、思わず買ってしまうかもしれない。駅弁を食べながら眺めた見知らぬ土地の風景、食べたときの空気感、一緒に旅した人の笑顔や交わした会話。箸を進めるごとに、じわりじわりとあの時に戻れるような気がして。

駅弁まつりに来る客の中には、「行ったことがない土地の駅弁を食べてみたい」という人もいると思うけど、きっと「あのとき旅先で食べた駅弁を食べたい」という人もいる。もしかしたら、かつて食べた味を求めて買いに来る人は、「食べたら、がっかりするだろうなあ」と薄々気づきながら買いにきているのかもしれない。

旅先で食べたあの味とまったく同じ味であるはずなのに、食べる環境によって、その味わいは色あせてしまう。

それでも、かつての旅で味わった旅情を買いに、人びとは駅弁まつりに足を運ぶ。駅弁好きな人って実はロマンチストなのかもしれない。そして、駅弁を製造販売している会社は、駅弁だけでなくロマンを売っている。

こういう話を、その兵庫県の駅弁製造販売会社の方に話したら、共感し合えた。こういう感覚の方が駅弁を製造販売している会社にいるって、なんだかうれしい。

(柏木智帆)